集中購買とは?3つのメリット・デメリットと効果的な購買戦略を解説
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企業の購買戦略において、集中購買は重要な選択肢のひとつです。コスト削減や業務効率化といったメリットがある一方で、柔軟な対応が難しかったり、発注から納品までにタイムラグがあったりと課題もあります。
本記事では、集中購買のメリットやデメリット、向いている資材を解説します。効果的な集中購買を実現するための「購買管理システム」の役割についても解説しているので、購買戦略を最適化したいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
集中購買とは|分散購買との違い
集中購買とは、企業が複数の事業所や部門の要望をとりまとめて集中的に発注したり、購入先を集約したりし、効率的に購買を行う手法です。とくに高額資材や、社内で共通して使用する資材に適しています。
発注量を増やすことで全体のコスト削減や業務効率化につながりますが、各部門の個別ニーズへの対応が難しいという課題もあります。
一方で、分散購買は各事業所や部門が独自に購買を行う方式です。現地のニーズに応じた柔軟な調達が可能です。しかし、全社的な購買データの統合が難しく、管理が複雑になるおそれがあります。
集中購買が全社的なコスト削減と効率化を重視するのに対し、分散購買は各部門の個別ニーズへの対応に重点を置きます。自社の状況や購入する資材の特性に応じて、適切な購買方式を選択しましょう。
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集中購買の3つのメリット
集中購買には、以下の3つのメリットがあります。
- コスト削減
- 業務効率化
- 内部統制の強化
集中購買によって実現できることを理解し、自社の現状と照らし合わせてみてください。
コスト削減
集中購買の大きなメリットは、大幅なコスト削減を実現できることです。商品や取引先を一か所に集約して大量一括購入することで、スケールメリットを得られます。購入量が増えることでサプライヤとの価格交渉を有利に進められ、ボリュームディスカウント獲得につながります。
さらに、購買管理の一元化により、詳細な購買データを分析しやすくなるでしょう。その結果、データの活用でさらなるコスト削減の余地を発見でき、無駄な発注を防止できます。類似品の統合や代替品の検討、購買頻度の最適化が可能になり、より戦略的な購買活動につながるでしょう。
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業務効率化
購買業務を一か所に集約することで、重複作業の削減と業務プロセスの標準化が可能になり、本来のコア業務に集中できるようになります。
発注業務だけでなく、サプライヤとの交渉や契約管理を一括で行える点もメリットです。一元管理された購買データから過去の購買実績を分析し、より効率的な購買計画を立てられるようになります。
集中購買の活用により、購買業務にかかる時間とコストが削減され、企業全体の生産性向上につながります。
内部統制の強化
集中購買によって購買フローが一元化されることで、内部統制の強化や不正行為の早期発見・防止につながり、企業の経営が健全に保たれます。
集中購買では購買プロセスが見える化されるため、各取引の追跡が可能となり、取引の透明性が確保されるためです。
また、サプライヤとの関係も一元管理されるため、癒着や利益相反のリスクも軽減可能です。
集中購買の3つのデメリット
集中購買には、以下のデメリットもあります。
- 柔軟性の制限
- 納期のタイムラグ
- 新規開拓の機会損失
集中購買のデメリットを正しく理解し、自社での導入を検討しましょう。
柔軟性の制限
集中購買ではすべての購買決定が一か所で行われるため、個々の部門や事業所の急な需要変化へのすばやい対応が困難です。
たとえば、ある部署が緊急で特定の資材を必要とした場合も、通常の購買プロセスをたどる必要があり、即座の対応が難しくなります。
特定のサプライヤと長期契約をした場合、市場の急激な変化や新たな機会に対して、購買戦略の柔軟な変更が難しくなるおそれもあります。新規開拓の機会を逃すことで、より新しく、より優れた製品やサービスへの切り替えを遅らせる原因になりかねません。
さらに、各部門の細かいニーズや特殊な要求への対応が難しくなり、イノベーションや新製品開発の妨げになるおそれもあります。
集中購買は効率性を高める一方で、組織の柔軟性を制限するというデメリットに注意が必要です。
納期のタイムラグ
発注を集約する購買方法では、各事業所の必要数量や要望をとりまとめる時間が必要となり、発注から納入までの期間が長い傾向です。集中購買部門と各事業所間のコミュニケーションに時間がかかった場合、発注プロセス全体が遅延するおそれもあります。
市場の急激な変化や、顧客の緊急の要求に迅速に対応することが難しい点もデメリットです。さらに、サプライヤの生産能力や在庫状況によっては、納期の長期化につながるおそれもあります。
納期のタイムラグは、生産計画の遅れや在庫管理の複雑化を引き起こし、最終的には顧客満足度の低下につながりかねません。集中購買を導入する際は、納期管理の最適化が重要な課題となります。
新規開拓の機会損失
集中購買では、新しいサプライヤや革新的な製品・サービスを開拓する機会が生まれにくくなります。大量発注によるコスト削減や、既存サプライヤとの長期的関係構築が重視されるためです。
購買決定が一か所に依存することで、各部門や事業所がもつ市場動向や技術トレンドに関する知見が十分に活用されないおそれもあります。既存のサプライヤとの関係を優先するあまり、より優れた条件や品質を提供する新規サプライヤの採用が見送られることもあるでしょう。
集中購買によるデメリットは購買管理システムの導入によって解決できます。
集中購買・分散購買の適正は資材によって異なる
資材の種類によって、集中購買と分散購買のどちらが適しているか異なります。
自社で取り扱う資材の特徴を把握し、効率的な購買管理の方法を見つけましょう。
集中購買が向いている資材
集中購買に向いている資材は、主に以下の3つに分けられます。
資材タイプ | 例 | 該当する資材を集中購買するメリット |
全社共通の汎用資材 | 事務用品、IT機器、清掃用品 | 大量発注によるボリュームディスカウント、コスト削減 |
高額資材 | 産業用機械、レアメタル | 一括購入による価格交渉力の向上 |
品質管理重要資材・輸入資材 | 医薬品原料、食品添加物、高級繊維素材(例:イタリアの高級生地) | 専門知識をもつ購買部による品質安定化、リスク軽減 |
集中購買は、汎用資材や高額資材、品質管理が難しい資材で効果を発揮します。コスト削減や品質管理の向上、リスク管理の効率化が可能です。
とくに、複雑な手続きや為替リスクを伴う輸入資材では、専門的な知識をもつ購買部門が一括管理することで、より戦略的な調達が可能となります。
分散購買が向いている資材
分散購買に向いている資材は、主に以下の2つに分けられます。
資材タイプ | 例 | 該当する資材を集中購買するメリット |
少量多品目で調達している資材 | 日用消耗品、小型工具 | 集中購買によるコスト削減効果が小さく、各事業所での個別購入が効率的 |
特注資材 | 特注部品、特殊材料 | 各部署が直接サプライヤと交渉することで、迅速かつ柔軟な調達が可能 |
短期プロジェクトで使用される部品や材料など、迅速な対応が求められる資材も分散購買に適しています。各部署が独自に調達することで納期を短縮し、プロジェクトのスムーズな進行が期待できるでしょう。
集中購買によるコスト削減効果が小さい資材や特別なニーズのある資材は、分散購買によって柔軟性と迅速性を確保できます。
集中購買と分散購買を組み合わせたハイブリッド戦略が効果的
効率的かつ適正コストでの購買管理を実現するには、集中購買と分散購買を組み合わせたハイブリッド戦略が効果的です。
集中購買では、コスト削減や購買データの一元管理が可能になりますが、柔軟性に欠けることがあります。一方、分散購買は各事業所が独自に調達を行うため、迅速な対応や地域特有のニーズに応じて柔軟に購買できます。
集中購買と分散購買のメリットを最大限に活用し、それぞれのデメリットを補完するならハイブリッド戦略が効果的です。たとえば、汎用性の高い間接材は集中購買で調達し、特殊な資材や緊急性の高いものは分散購買で対応するなど、資材の特性に応じて適切な購買方法を選択することです。
集中購買と分散購買を効果的に組み合わせることで、コスト効率と柔軟性のバランスがとれた最適な購買戦略を実現できます。
以下の記事では、購買管理を効率的に進めるポイントや準備の方法をご紹介しています。購買管理業務を適性化したいと考えている方は、ぜひお役立てください。
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効果的な集中購買に役立つ「購買管理システム」
効果的な集中購買を実現するには、購買管理システムの導入が非常に有効です。購買管理システムは、購買プロセス全体を一元管理し、透明性と効率性を向上させる強力なツールです。発注から承認、支払いまでのプロセスを電子化することで、業務効率を大幅に改善します。
さらに、購買データをシステム内で集中管理することで、詳細なコスト分析や最適なサプライヤ選定が可能になります。集中購買のメリットを最大化し、デメリットを最小化する効果的な手段といえるでしょう。また、システムは集中購買だけでなく分散購買も効率的に購買できる仕組みとなっており、ハイブリッド戦略においても有効です。
以下では、購買管理システムの導入メリットや、お役立ち機能を解説しています。購買管理に課題を感じている方は、ぜひ一度チェックしてみてください。
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購買管理システムが戦略的購買を実現できる3つの理由
購買管理システムの導入が購買戦略に役立つ理由は、以下の3つです。
- データの一元管理と可視化
- プロセスの標準化と効率化
- サプライヤ管理の最適化
得られるメリットと自社の課題を照らし合わせ、購買管理システムの導入を検討してみてください。
データの一元管理と可視化
社内の全購買関連データを、購買管理システムで集約して一元管理することで、企業全体の購買活動を包括的に把握できます。各部門や拠点の購買実績やサプライヤ情報、価格履歴をリアルタイムで確認できるため、データに基づいた戦略的な意思決定が可能になるでしょう。
可視化された情報は、効果的な購買戦略の立案や、サプライヤとの交渉にも活用可能です。たとえば、過去の取引データを分析することで、コストの削減余地を発見し、価格交渉の際の根拠として使用できます。
さらに、データの一元管理と可視化は内部統制の強化にもつながります。すべての取引が透明化されることで、不正や無駄の発見が容易になり、コンプライアンスの向上にも貢献できるでしょう。
以下では、購買の見える化により内部統制の強化につながった事例を紹介しています。自社のコンプライアンス向上を目指している方は、参考にしてみてください。
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ワークフローの可視化により内部統制を強化。
プロセスの標準化と効率化
購買管理システムでは、発注や仕入れ、支払いなどの購買プロセスを電子化することで、手作業によるエラーを防いで業務フローを統一します。各部門が同じ手順で業務を進められるため、全体の業務効率の向上も期待できるでしょう。
さらに、システムで効率的なデータ分析が可能になり、常に最新の情報をもとにした迅速な意思決定を支援します。
購買システムの活用により購入先が集約され、ボリュームディスカウントを受けながら各拠点・部署からの発注が可能になる点もメリットです。ひとつの部署に業務が集中することを防ぎつつ、集中購買のメリットを最大限に活用できます。
以下では、購買管理システムの導入で、発注工数が大幅に減少した事例を紹介しています。購買業務の効率化に悩んでいる方は、一度チェックしてみてください。
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「カルビー株式会社」様 >>
見積もりや価格比較を含めた発注工数が約50%減少。
サプライヤ管理の最適化
購買管理システムではサプライヤ情報を一元管理し、取引実績や評価データを包括的に把握できるため、最適なサプライヤの選定や評価が可能です。品質や価格、納期などの観点から最適なサプライヤとの取引を集中的に行え、効率的な調達が実現します。
見積もり商談機能が搭載されているシステムでは、相見積もりを電子化し効率的に行えます。見積もりのプロセスも履歴データとして残せるため、今後の価格交渉の材料としても役立つでしょう。
購買管理システムを活用したサプライヤ管理の最適化は、集中購買の主要なメリットである交渉力の向上につながり、コスト削減に貢献します。以下の記事では、最適なサプライヤ管理によってコストパフォーマンスの高い購買方法を実現した事例を紹介しています。サプライヤの選定にお悩みの方は、ご参考ください。
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「医療法人鉄蕉会 亀田総合病院」様 >>
効果的な集中購買によってコスト削減を実現。
集中購買を活用して効率的な購買戦略を実現しよう
集中購買は、コスト削減や内部統制の強化、業務効率化など多くのメリットをもたらす一方で、柔軟性の制限や納期のタイムラグといった課題もあります。
効果的な購買戦略を実現するには、資材の特性に応じて集中購買と分散購買を適切に組み合わせたハイブリッド戦略が有効です。購買管理システムを活用すれば、データの一元管理によって業務効率化が可能となり、集中購買のメリットを最大限に活かせるでしょう。
自社の状況や取り扱う資材の特性を十分に分析し、適切な購買戦略を選択することで、競争力の向上や持続可能な成長を実現できます。購買管理システムによって集中購買を最適化し、戦略的調達を実現しましょう。
購買管理システム導入で実際どう変わる?
購買業務でよくある4大お悩み
「コスト削減・業務効率化・内部統制・グリーン購入」。
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