グリーン調達とは?3つのメリットやグリーン購入との違いを解説
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近年ではSDGsへの意識の高まりから、グリーン調達やグリーン購入にも注目が集まっています。企業は環境に配慮した調達を行うことで、社会的責任を果たしつつ、自社の競争力や事業における持続可能性の向上にもつながるでしょう。
本記事では、グリーン調達の概要やグリーン購入との違い、企業にとっての3つのメリットを解説します。社内で推進するための3ステップも紹介しているので、グリーン調達に課題を感じている方はぜひ参考にしてみてください。
また、後半では間接材(消耗品)購買を通したグリーン購入への取り組みについても解説しますので、間接材の環境購買に興味のある方はぜひ最後まで読んでみてください。
目次
SDGs達成に向けたグリーン調達とは|環境に配慮した調達
グリーン調達とは、企業が環境負荷の少ない製品やサービスを優先的に調達し、環境に配慮している企業から購入する取り組みです。
グリーン調達は、SDGsの12番目の開発目標である「つくる責任、つかう責任」にも大きく関係します。バリューチェーンマネジメント(VCM)の一環として実施され、原料調達から製品の廃棄までライフサイクル全体における環境負荷の低減と、付加価値の向上が目的です。
サプライヤは納入先企業のグリーン調達方針に沿って、環境に配慮した製品や取り組みを提供する必要があります。
グリーン調達の推進により企業全体の環境負荷が低減され、持続可能な社会の実現に貢献できるでしょう。さらに、環境配慮型の製品開発や生産が促進され、企業の競争力向上にもつながります。
グリーン調達を推進する3つのメリット
グリーン調達を推進するメリットは以下の3つです。
- 企業価値の向上
- 法規制変更への対応
- 新たな市場機会の創出
自社の状況と照らし合わせ、推進する理由を明確にしましょう。
企業価値の向上
グリーン調達は、企業の社会的責任(CSR)の重要な取り組みとして投資家や消費者から評価され、信頼が高まります。さらに、環境基準を満たすサプライヤを選定し、協力して環境負荷低減に取り組むことで、取引先との信頼関係も強化できます。
環境に配慮した経営姿勢はESG投資の観点からも重視され、企業価値の向上につながるでしょう。グリーン調達の推進により、ステークホルダーからの信頼獲得や、持続的な調達活動の推進が可能となり、長期的な企業成長の基盤を築けます。
法規制変更への対応
法令を遵守したグリーン調達の徹底は、企業のリスク管理強化につながります。
環境関連の法規制は年々厳しくなっており、社会からの環境配慮に対する要請も高まっているのが現状です。環境関連法規の最新動向を常に把握し、調達基準に反映させることで、法令遵守のリスクを低減できるでしょう。
また、取引先の環境対応状況を把握し、潜在的なリスクを特定して早期の対策も可能です。グリーン調達の推進により環境リスクへの対応力が向上し、持続可能な事業運営を実現できます。
新たな市場機会の創出
環境に配慮した経営姿勢を明確に示すことで、新たな市場機会を獲得できる可能性が広がります。環境基準を満たす企業だと認識されることで、同様の価値観をもつ企業との新規取引機会を得やすくなるからです。
近年、消費者や企業の環境意識は高まっており、環境配慮型製品への需要は増加傾向です。
グリーン調達を通じて、環境負荷の低い原材料や部品を積極的に採用することで、環境配慮型製品の開発が促進されます。従来の市場では満たされていなかった新製品を生み出すことで、新規顧客の獲得や競合他社との差別化につながり、企業の持続的成長が期待できるでしょう。
グリーン調達における3つの課題
グリーン調達を推進するうえで、以下の3つの課題があります。
- コストと環境性能のバランス
- サプライヤへの対応
- 要求基準が多様
課題と自社の状況を照らし合わせ、グリーン調達の推進が可能かどうか検討しましょう。
コストと環境性能のバランス
環境に配慮した製品や原材料は、従来のものと比較してコストが高くなりやすい傾向にあります。環境負荷の低い材料の使用や環境配慮型の製造プロセスの導入、厳格な品質管理などが要因です。
短期的にはコスト増加のおそれがありますが、長期的には以下のメリットが期待できます。
- 省エネルギーやリサイクル性の向上によるコスト削減
- 環境規制への対応力強化
- 企業イメージの向上
企業は、自社の経営戦略や財務状況、市場動向を考慮しながら、適切な環境性能とコストのバランスを検討する必要があります。たとえば、段階的なグリーン調達の導入や、重点分野を絞った取り組みなど、柔軟なアプローチを検討することも有効です。
以下では、購買管理システムの導入によって適正コストと持続可能性(SDGs)の両立を実現した事例を紹介しています。グリーン調達の推進が自社の利益につながるかお悩みの方は、参考にしてみてください。
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サプライヤへの対応
グリーン調達を効果的に推進するためには、サプライヤの協力が不可欠です。多くの場合、発注側企業はサプライヤに対して環境マネジメントシステム(EMS)の構築や環境認証の取得を要求します。
環境マネジメントシステム(EMS)の構築とは、組織の環境方針や目標を達成するための体制を整備することです。環境認証は、その取り組みが一定の基準を満たすことを第三者機関が証明することを指します。
しかし、すべてのサプライヤがこれらの要求に即座に対応できるわけではありません。
とくに中小企業のサプライヤにとっては、EMSの構築やISO14001などの認証取得にかかるコスト、人的リソースの確保が大きな負担となる可能性があります。
すべてのサプライヤが即座に高度な環境基準に対応できるわけではないため、段階的な導入を検討しましょう。また、サプライヤとのコミュニケーションを通じて、実現可能な目標設定や導入時期の調整を行うことで、持続可能なサプライチェーンの構築につながります。
要求基準が多様
グリーン調達基準は企業ごとに異なる傾向があり、多様性が効率的なグリーン調達を妨げる要因となっています。
大手企業は一般的に独自の詳細な基準を設けていますが、中小企業では策定が進んでいない傾向です。サプライチェーン全体での統一的な取り組みが困難になることで、環境負荷低減の効果を最大化できないおそれがあります。
業界団体や政府機関が標準的なガイドラインを提供していますが、個々の企業の事業特性や環境戦略に合わせた調整が必要です。
グリーン調達の効果を高めるためには、業界での標準化の推進や、中小企業でも導入しやすい簡易な基準の策定など、要求基準を標準化する取り組みが求められます。
グリーン調達を社内で推進するための3ステップ
グリーン調達を社内で推進するために、以下の3つのステップを進めましょう。
- グリーン調達基準書の設定
- グリーン調達基準の共有と実施体制の構築
- グリーン調達基準の運用と改善
自社の環境パフォーマンスに課題を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1. グリーン調達基準書の設定
グリーン調達を推進するためには、まず自社の環境方針や経営戦略に基づいたグリーン調達基準書を策定します。以下の要素を含めて、基準書を作成しましょう。
- 環境方針と目的
- 適用範囲
- 法令の遵守
- 化学物質管理
- 省エネルギー・温室効果ガス削減
- 廃棄物削減とリサイクル
- サプライヤ評価基準
環境省が発行している「グリーン調達推進ガイドライン」を参考にして、自社の事業特性に合わせた内容を設定します。基準書は定期的に見直し、法規制の変更や自社の環境目標の進展に応じて更新していくことが望ましいでしょう。
2. グリーン調達基準の共有と実施体制の構築
グリーン調達基準の体制が整ったら、経営層の承認を得たうえで社内外に周知しましょう。
社内では、研修やワークショップの開催、イントラネットでの共有などを通じて、全従業員への浸透を図ります。サプライヤに対しては、説明会を開催して新しい基準への理解と協力を求めます。基準の背景や目的、具体的な要求事項を明確に伝え、質疑応答の時間も設けてサプライヤとの良好な関係構築に努めましょう。
実施体制の構築は、責任者や担当部署を明確にし、関連部門との連携体制を確立することが重要です。定期的な進捗報告や課題共有の場を設け、組織全体でグリーン調達推進の体制を整えます。
3. グリーン調達基準の運用と改善
グリーン調達基準の運用開始後は定期的に実施状況を評価し、その結果を詳細に分析します。法令の変更があった場合は、迅速に基準に反映させることが重要です。
運用結果のフィードバックをもとに、必要に応じて基準の見直しや改定を行います。サプライヤの環境パフォーマンスも定期的に評価し、改善の機会を特定します。
また、社内外の環境動向や技術革新を常に注視し、より高度な環境目標の設定や新たな環境配慮項目の追加を検討しましょう。たとえば、再生可能エネルギーの利用促進やサーキュラーエコノミー(環境に配慮した循環経済)への貢献など、最新のサステナビリティトレンドを取り入れることも重要です。
グリーン調達に関連する用語
グリーン調達に関連する用語として、以下の2つがあります。
- CSR調達
- グリーン購入
グリーン調達との違いや関連性を正しく把握し、理解を深めましょう。
CSR調達
CSR調達は、企業の社会的責任(CSR)を果たすため、サプライチェーン全体で環境、労働条件、人権などを考慮した調達活動を指します。グリーン調達が環境負荷の少ない製品やサービスの調達に特化しているのに対し、CSR調達はより広範な社会的責任を含む包括的な取り組みです。
CSR調達では、具体的に以下の要素が含まれます。
- 環境への配慮
- 労働環境と人権の尊重
- 法令遵守と倫理的行動
- 品質と安全性の確保
- 地域社会への貢献
CSR調達の実践により、自社だけでなく取引先も含めた持続可能な事業運営を実現できます。グリーン調達はCSR調達の重要な一部のため、組み合わせることでより包括的で効果的な調達戦略の構築ができます。
グリーン購入
グリーン購入は、環境負荷の少ない製品やサービスを優先的に選択し、調達する取り組みです。環境に配慮した製品を調達するという点ではグリーン調達と同じですが、その主体が主に消費者や公的機関となる点で異なります。また、企業であっても間接材(原材料や部品以外の物品)を購入する場合に該当するのはグリーン購入です。日本では「グリーン購入法」に基づき、公的機関にグリーン購入の実施が義務付けられています。
グリーン購入の対象となる製品やサービスの特徴は、以下の通りです。
- 再生材料の使用
- 省エネルギー設計
- 長寿命化
- リサイクル可能な設計
- 有害物質の削減
グリーン購入を実践することで、消費者や組織は環境保全に貢献しつつ、環境配慮型製品の市場拡大を促進し、持続可能な社会の構築に貢献できます。
グリーン購入推進の背景は環境省の「グリーン購入法」
グリーン購入の普及には、世界的な環境保全活動の推進が大きく影響しています。日本では環境保全活動の流れを受けて、2001年に「グリーン購入法(正式名称:国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)」が制定されました。
グリーン購入法の主な特徴は以下の通りです。
- 国や地方公共団体に環境負荷の少ない商品やサービスの優先的購入を求める
- 環境物品等の調達を推進するための基本方針を定める
- 特定調達品目とその判断基準を規定する
グリーン購入法の制定は、社会全体の環境意識の高まりを反映し、グリーン購入推進の大きな要因となりました。公的機関が率先してグリーン購入を実践することで、環境配慮型製品・サービスの市場拡大が促進され、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの加速が期待されています。
同じ環境配慮購買でも「グリーン購入」から着手するのがおすすめ
同じ環境配慮型購買でも、身近な間接材や消耗品にかかわるグリーン購入は着手しやすく、出発点としておすすめです。
たとえば、事務用品やコピー機、コピー用紙などは比較的簡単に環境配慮型製品に切り替えられます。間接材はほとんどの従業員が関係するため、社内の環境意識向上にも役立つでしょう。会社の取り組みとして、社内外に発信しやすい点もメリットです。
間接材でのグリーン購入を効果的に推進するには、購買管理システムの導入が有効です。購買管理システムは、発注から支払いまでの流れを一元管理し、承認フローの電子化や支出分析に役立ちます。身近な間接材からグリーン購入をはじめ、少しずつ取り組みを広げていくことで、持続可能な調達方法を確立できるでしょう。
購買管理システムについては、以下の記事で詳しく解説しています。グリーン調達の推進を間接材からはじめようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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購買管理システムの機能やメリットを解説。
購買管理システムがグリーン購入に役立つ理由
購買管理システムを活用すれば、環境配慮型製品の調達状況や、サプライヤの環境パフォーマンスを容易に把握できるようになります。たとえば、エコマーク・グリーンマーク・GPN掲載品・グリーン購入法適合品などを商品マスタに設定すると、環境配慮製品を簡単に判別可能になります。
さらに、データの可視化により、経営層や関連部署との情報共有が容易になり、グリーン調達の進捗状況や課題の迅速な把握につながるでしょう。蓄積されたデータを分析し、エコ商品購買比率の可視化も可能です。社内で定期的に状況を共有することで、適切な意思決定につながります。
以下では、グリーン購入法適合品の判別機能がグリーン購入推進に向けたデータ分析に役立った事例を紹介しています。グリーン購入を効率的に推進したいと考えている方は、一度チェックしてみてください。
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グリーン調達を推進して環境に配慮しつつ自社の価値を高めよう
グリーン調達は、SDGsにも関わり、環境負荷の低減と企業価値向上を両立させる重要な取り組みです。企業価値の向上やリスク回避のメリットがある一方で、コストと環境性能のバランスやサプライヤへの対応などの課題もあります。
グリーン調達を推進するには、基準書を策定し、運用と改善を繰り返していく必要があります。まずは身近な間接材からグリーン購入をはじめ、徐々に取り組みを拡大していきましょう。
グリーン購買に購買管理システムを活用すると、環境配慮型製品の調達状況やサプライヤの環境パフォーマンスが可視化され、効率的に推進できるようになります。グリーン調達を通じて、環境に配慮しつつ自社の価値を高める取り組みを進めていきましょう。
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